食事中に猫からかわいくおねだりされると、ついつい少しお裾分けしたくなりますよね。
人間にとってはおいしい食べ物でも猫にとっては体に良くないものがあります。
猫にとって有害な食品を与えると、嘔吐や下痢の症状が出たり場合によっては腎障害、肝障害などを起こし命にかかわる場合もあります。
この記事では人間の食品の中でも猫に与えてはいけない食品について紹介します。
菓子類
キシリトール
(犬で)ふらつき、昏睡など
猫へのキシリトール投与について、参照した文献はこちらです。
チョコレート
嘔吐、下痢、発熱、痙攣(けいれん)、興奮、不整脈、のどの渇き、昏睡など
カカオの含有量が多いチョコレートほど危険度が高く、ダークチョコレートはホワイトチョコレートやミルクチョコレートよりも危険です。
果物
ぶどう、レーズン
嘔吐、下痢、無気力、食欲低下、水をたくさん飲む、尿量の減少など
食べてから数時間から1日以内に症状が現れることが多いと言われています。
多量に食べてしまった場合は死に至る場合もあります。
あんず、梅、ビワ、桃、スモモ、プルーンなど
大量摂取した場合に、脱力、嘔吐、昏迷、痙攣(けいれん)、呼吸困難など
アミグダリン自体は無害ですが、食べてしまって胃腸内で分解されると猛毒であるシアン化水素(青酸)になります。
梅干しや果実酒を作るために青梅が販売されていますが、そのまま食べてしまわないように気をつけましょう。
また、小さな実や種を喉に詰まらせてしまうリスクもあります。
いちじく
下痢、嘔吐、皮膚炎、口腔内の炎症、よだれ、食欲不振など
乳液がついた皮膚、口の周りなどが紫外線から刺激を受けやすくなり、日光に当たると赤み、腫れ、水膨れをともなう皮膚炎をおこします。
イチジクにはフィシンというたんぱく質消化酵素が含まれており、人間が食後にイチジクを食べると消化促進になると言われますが、猫がイチジクを食べると口腔内の粘膜を荒らしてしまうことがあります。
また、嘔吐や下痢を引き起こすソラレンという中毒物質も含まれます。
生のイチジクだけでなく、ドライフルーツやジャムなどの加工品も中毒症状を引き起こす場合があるので要注意です。
ざくろ
嘔吐、下痢、胃炎、めまい、運動失調、昏睡、中枢神経麻痺など
大量に摂取すると嘔吐、下痢、中枢神経麻痺などの中毒症状を起こす場合があります。
ざくろの果皮を猫に触らせたりかじらせたりしないようにしましょう。
柑橘類(みかん、オレンジ、ライムなど)
嘔吐、震え、皮膚炎、運動失調など
人間はリモネンを摂取しても肝臓で分解し体外へ排泄することができますが、猫はリモネンを分解する酵素を持たないので排泄することができません。
多く摂ると中毒症状が現れます。
柑橘類そのものだけではなく、日用品の中でもアロマオイル、洗剤、芳香剤などにはリモネンが含まれます。
アロマオイルなどリモネンが濃縮されている製品は猫にとって危険です。
猫がいる部屋では使わないようにしましょう。
野菜
アボカド
嘔吐、下痢、呼吸困難、痙攣(けいれん)など
日本でよく流通しているグアテマラ系のアボカドは特にペルシンの含有量が多く毒性が強く、観葉植物として室内で育てている場合は葉を口にしないように注意が必要です。
玉ねぎ、にんにく、ニラ、らっきょう、チャイブ
無気力、衰弱、食欲低下、粘膜の色が白っぽい(貧血)、血尿(オレンジから濃い赤)など
ネギの入った味噌汁、肉じゃがの煮汁などにも中毒物質が溶け出しているので与えてはいけません。
トマト、ナス
腹痛、嘔吐、下痢、血便、痙攣(けいれん)、呼吸困難など
家庭菜園でトマトを育てている場合は猫が触れられないよう置き場所に配慮してください。
猫にトマトを与える場合は、真っ赤に完熟した実をごく少量にとどめ、決して未成熟(緑色の部分が残っている)トマトを与えないようにしましょう。
同様にナスも果実や根、茎、葉などにアルカロイド系の有害物質を含んでいます。
特に根、茎、葉、未成熟な実はアルカロイドを多く含んでおり、危険です。
生の里芋
口内炎、舌炎、よだれ、嘔吐など
猫が誤って生の里芋や茎を食べてしまった場合は、シュウ酸カルシウムの結晶で口の中や食道、胃の粘膜が傷つき、嘔吐や口腔内の炎症を起こすことがあります。
ミント
発熱、嘔吐、呼吸困難、ふるえ、ふらつき、肝障害など
猫は肝臓で解毒することができないため、体内に蓄積され体調不良を起こします。
部屋で精油を使ってアロマをたくと、毛に付着した成分を舐めて摂取してしまうこともあります。
同様にハッカ油も猫にとっては危険です。
卵、肉、魚介類
生卵
嘔吐、下痢、発熱、無気力、皮膚・被毛のトラブルなど
また、生卵の白身にはアビジンというたんぱく質が含まれていて、アビジンはビオチン(ビタミンB7)と結合することでビオチンの吸収を阻害します。
ビオチン欠乏症になると皮膚炎、結膜炎、脱毛などが見られる場合があります。
加熱することでアビジンは失活するので、猫に卵を与える時は過熱してから与えましょう。
生肉
嘔吐、下痢、無気力など
また生の豚肉からはトキソプラズマという寄生虫に感染することがあります。
トキソプラズマは人獣共通感染症で猫の排泄物を通して人間にも感染します。
レバー
食欲不振、脱毛、皮膚の乾燥、関節のトラブル、繁殖機能の低下など
またレバーを生で食べると、カンピロバクター、大腸菌などによる食中毒を起こしたり、回虫や無鉤条虫に感染するリスクがあります。
猫はβカロテンからビタミンAを合成することができないので食事からビタミンAをとる必要があります。
足りなくても多すぎても体調を崩してしまうため総合栄養食にはバランスよくビタミンAが入っています。
骨
口腔内や消化器へのダメージ
サバ、イワシなど青魚
皮下のしこり、熱感、痛みなど
不飽和脂肪酸の一種であるEPAやDHAは毛づやの改善や炎症の緩和など体にとって良い働きをする栄養素です。
しかし不飽和脂肪酸は体内で分解される際に多くのビタミンEを消費するため、不飽和脂肪酸を摂りすぎるとビタミンEの欠乏から黄色脂肪症になることがあります。
黄色脂肪症になると皮下脂肪が炎症を起こし、しこりとなり熱を持ったり痛みが出たりします。
少量であれば問題ありませんが、猫に青魚を与えすぎないようにしましょう。
猫用療法食の中にはEPAやDHAを強化した製品もありますが、そういった製品はビタミンE不足にならないようあらかじめビタミンEも豊富に含まれています。
イカ、タコ、エビ、カニ、二枚貝
食欲不振、嘔吐、下痢、歩行障害、視覚障害、筋力低下、成長不良、昏睡など
ビタミンB1が壊されると多発性神経炎(歩行障害や視覚障害など)やビタミンB1欠乏症(食欲不振、嘔吐、下痢、筋力低下、脚気、昏睡など)が起こることがあります。
加熱することでチアミナーゼは壊れますが、イカやタコは弾力が強いので丸呑みする際に喉に詰まらせることもありますし、消化に時間がかかり嘔吐や下痢を起こすこともあります。
アワビ、サザエ
日光性皮膚炎(耳など日光に当たりやすい部分に腫れ、かゆみ、痛み、水疱など)
これらに日光が当たることで皮膚に炎症を起こし、かゆみや腫れの症状が現れます。
季節性があり春先(2月から5月頃)に毒性が強まります。
飲料
アルコール
長時間にわたる酩酊状態、震え、ふらつき、昏睡状態など
少量の飲酒でも中枢神経に影響し、酔っぱらった状態(酩酊)になりえます。
分解されないので有害物質として体内に蓄積され、血中のアルコール濃度が下がるのにも時間がかかり、摂取量によっては脳への影響や死に至る可能性があります。
牛乳
下痢など
そのため、成猫が牛乳を多く飲むと下痢を起こしやすくなります。
成猫になってからどの程度ラクターゼを作ることができるかは猫によって差があるため、下痢を起こす量には個体差があります。
ヨーグルトは乳糖の一部が乳酸菌で分解されていますが、乳糖を含む食品なので与えすぎないように気をつけましょう。
またペット用として乳糖を分解したミルクも販売されていますが、カロリーオーバーにならないよう、与えるときは適量で。
1日の摂取カロリーの目安はこちらをご参照ください。
日本茶、コーヒー、紅茶、ココア
嘔吐、ふらつき、興奮、ふるえ、痙攣(けいれん)、不整脈、頻脈、過呼吸など
猫が摂取することで体調不良を起こすことがあり、大量に摂取すると命にかかわる場合もあります。
カフェインを多く含む食材が使われたお菓子も猫には与えないようにしましょう。
「猫はコーヒーなんて飲まないんじゃ?」と思っていたのですが、うちの子はカフェオレをテーブルに置くと興味津々で寄ってきます。
ミルクやバターの香りに引き寄せられる子はお菓子なんかにも寄ってくるので要注意です。
その他
マカデミアナッツ
嘔吐、下痢、ふるえ、発熱、痙攣(けいれん)呼吸困難、など
塩で味付けされたナッツに興味を持つ猫もいるので、うっかり食べてしまわないようにしましょう。
アーモンド
脱力、嘔吐、昏迷、痙攣(けいれん)、呼吸困難など
アミグダリン自体は無害ですが、食べてしまって胃腸内で分解されると猛毒であるシアン化水素(青酸)になります。
ビターアーモンドはアミグダリンの含有量が多いため、特に注意が必要です。
人間用サプリメント(αーリポ酸)
よだれ、嘔吐、震え、痙攣(けいれん)など低血糖による症状
猫はαーリポ酸の匂いを好むため、サプリメントの袋を噛みちぎって中身を食べてしまったという事例もあります。
猫は犬や人で毒性を示す最小量の1/10程度の量でも毒性が強く表れると言われています。
そのためサプリメントに含まれるαーリポ酸の濃度によっては、たった1粒でも死に至ることがあります。
他にも体に蓄積されやすい脂溶性ビタミン(ビタミンA,ビタミンD,ビタミンE)の摂りすぎで過剰症を起こす場合があります。
猫にサプリメントを与える場合は獣医師の指導の下、適量を与えるようにしてください。
銀杏(ぎんなん)
嘔吐、下痢、ふらつき、発熱、痙攣(けいれん)、呼吸困難など
ビタミンB6の作用が抑えられると神経の興奮を抑える物質の合成が邪魔され、痙攣(けいれん)などの中毒症状を起こす場合があります。
人間でも体が小さなお子さんが銀杏を食べすぎると死に至る中毒を起こすことがあります。
パン生地
嘔吐、下痢、酩酊状態、呼吸困難、昏睡など
胃の内容物が膨張し胃腸を圧迫したり閉塞させることによる消化器症状、アルコール摂取による中毒症状が現れ、場合によっては死に至る場合もあります。
香辛料
嘔吐、下痢など
もしも食べてしまったら
万が一、猫が毒性のあるものや安全かわからないものを食べてしまった時は、すぐにかかりつけの動物病院に連絡し、診察の必要があるかなどご確認ください。
食塩水を飲ませるなどの自己流の催吐処置は猫にとっても人間にとっても危険な場合があります。
獣医師の指示を受けるようにしてください。
動物病院に連絡する時は、下記の内容を伝えるとスムーズです。
- 食べたものの名称
- 食べた量
- 食べた時間
- 猫の様子(よだれ、嘔吐、ふらつき、けいれん、興奮などがないか)
- 病院に到着するまでの所要時間
食べたものの残りやパッケージ、嘔吐物などもあれば動物病院に持っていきましょう。
猫については、キシリトールを与えても低血糖や肝障害を起こさなかったという報告もありますが、まだ検証された頭数が少ないことや猫にとってキシリトールは必要な食品ではないこともあり、猫についてもキシリトールの摂取は勧めていません。